東芝のいわゆる「不適切会計」で感じたこと

 東芝が、いわゆる「不適切会計」で、各方面から大きな批判を浴びています。今回の不祥事によって、同社はブランドの毀損や資金調達の困難化など、様々な苦境を抱えることになるでしょう。身から出た錆と言えばそれまでですが、今後が心配です。利益が底上げされていたとはいえ、半導体事業のように日本企業最後の希望と言える地位にある、お金に掛かるビジネスがありますから。

大きな権限には、大きな責任が伴う

 今回の事件の推移を見ている中で、昨年参加した、ものづくり企業を対象にした調達をテーマにしたセミナーの、ある講演を思い出しました。そこには、東芝の調達部門の方が講師として登壇していました。そう。現在、渦中にある東芝社長の田中久雄氏の古巣だった部署が調達部門なのです。

 

 東芝ほど大きな企業になると、調達する資材の種類と量は、莫大です。調達先や納入先も雑多であり、それぞれ個別のニーズや事業状況を抱えています。そんな調達の効率化の成否は、企業の業績を大きく左右するほど大きなインパクトがあります。

 

 セミナーでは、東芝がいかに効率的な調達システムを構築していったのか、そのサクセスストリーを解説するものでした。調達部門から初めて社長を排出したということもあり、田中氏がどのような役割を演じて、どのような革新的な調達システムを構築していったのか、同氏の足跡をたどりながら誇らしく語るまさに英雄譚でした。

 

 そして登壇した講師は、今はものづくりにおいて、「開発の時代」から「マーケティングの時代」を経て、「調達の時代」になりつつあることを高らかに宣言していました。図らずも今回の事件は、現在のものづくり企業の中で、調達部門の権限と責任の大きさを端的に示すものでした。

 

 今回の事件には、調達部門も関与していると言われています。何らかのかたちで、調達部門に業務改革が迫られることになるのは必至です。でも、調達部門が萎縮してしまったら、東芝が今後も社会の中で大きな役割を演じることはできないでしょう。あのApple社のSteve Jobs氏が、後継者にサプライチェーンの専門家であるTim Cook氏を選ぶというのが、今の時代です。確かに、調達の役割は、極めて重要になっています。

 

 大きな権限は、大きな責任を伴うことを再認識して、がんばって欲しいものです。