新しいMacBookが4月10日に発売されました。同じ日には、Apple Watchの予約も始まっています。いずれも既に納品まで1カ月以上待つ人気を集めているようです。現在は、Apple Storeや量販店の店頭にも並んでいるので、試された方も多いのではないでしょうか。
今回発売した2つの製品は、新しい製品の登場を無条件で大歓迎されてきたいつものApple製品とは違った共通点があります。それらに見られる圧倒的な未来の可能性は認めながらも、現在の製品の仕様が中途半端ではないかという見方が、世の中に蔓延していることです。例えば新しいMacBookは、「プロセッサーが非力すぎるのではないか」「端子がUSB3.1 Type-Cが1ポートしかないのはいくらなんでも削り過ぎではないか」といった意見があります。そして、ネット上のさまざまなブログで「俺は買う」「今回はスルー」といった意見が交わされています。
炎上上等という戦略
しかし、こうした物議が醸しだされることは、Appleにとって完全に織り込み済みなのではないでしょうか。私は、今のAppleが抱えている課題を解決するための最良の策が、今回の製品の発売であり、それに関わるマーケティング活動にあると考えています。
Jobs亡き後のAppleが、これまでどおりに攻め続けることができる企業であること。現在のAppleが抱える最大の課題とは、こうしたイメージをいかに維持するかという点にありました。つまり、Jobsの遺産を食いつぶして終わりになる企業ではなく、JobsのDNAを引き継ぐ企業であることを端的に示す必要があったのです。発売した製品は、人とお金と時間を思いっ切り掛けて本気で仕掛けた、AppleによるJobs的ファイティングポーズなのだと思います。
今回のAppleの戦略は、第1フェーズは大成功だったと言えるでしょう。Appleがリスクを覚悟で挑戦していることを示し、その事実を消費者に拡散することに成功しました。ただし、発売した製品もしくは次世代品で成功することによって、今回のマーケティングが完結するのだと思います。「ファイティングポーズはとりました、でもKOされました」ではダメなのです。
Jobs時代に行ってきた攻めの製品戦略は、すべてが成功したわけではありません。でも、Jobs後最初の攻めの製品は、何が何でも成功させたいはずです。発売された製品は、既に長い納品待ちを覚悟で買う状況になっています。Appleにとって良い方向に向かっています。第2フェーズも成功を収める予兆なのか、それともこれは供給量を絞ることで活況感を作り出すAppleの演出か。いずれにせよ、ブランド価値世界一の企業の今後の行方に注目しています。
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