業界標準に準拠するのも一苦労

 パソコンやサーバーの電源には、「VR13」といった業界標準の規格があります。インテル社のマイクロプロセッサーを安定して動かすために、電源回路が満たすべき仕様をまとめたものです。電源回路を構成するDC-DCコンバーターなどに使う半導体を販売するメーカーは、この規格に準拠していることが、市場に入るための条件になります。


 先日パワー半導体のエンジニアの方から、おもしろいお話しをお聞きしました。一度、業界標準で定められた条件を満たす半導体を作ることができたとしても、半導体メーカーは一安心とはいかないようなのです。


変化し続ける業界標準

 それは、業界標準自体が常に変わり続けているからです。インテル社は、自社製のマイクロプロセッサーが、より高性能を発揮し、かつ低コストで製造できるように、チップ内部の回路構成を改良し続けます。そして、その改良に合わせて、電源の仕様も変更しています。このため、電源回路やそれを構成する半導体メーカーも、その変化に対応できるように製品を改良し続けないと、準拠していない状態になってしまうのです。驚いたことに、同じ「VR13」の中でもこうした規格の変化が頻繁に起こるそうです。


 業界標準に準拠し続けるのは簡単なことではありません。変化に迅速に対応できる技術力と耐性を整えているメーカーだけが、市場で生き残ることになります。思いの外しんどい話です。