あえて伝えないマーケティング

 今日、訪問させていただいたある半導体メーカーでお聞きした話です。その会社のチップは、機器に組み込むことで圧倒的な価値を生み出すのですが、製品に名前がつけられていません。あえて製品名をつけなかったのだそうです。チップのパッケージには、会社のロゴさえついていませんでした。理由は、その製品を使っている顧客が、秘密にしておきたいと言うから、というのもです。顧客の利益を守るために、目立たないようにしているとのこと。

 

 その半導体メーカーでは、こうした手法を「黒子戦術」と呼んでいました。それでも結果的に、ある種の機器の約90%に搭載されるという圧倒的なシェアを獲得しているから恐れ入ります。顧客同士で、競合が優れた機器を作った秘密を研究し、そのチップの効果に気づいたのでしょう。

 

 素晴らしい技術、製品ができると、思いっ切りマーケティングやブランディングをしたくなるものです。でも、それは最良の方法なのでしょうか。あえて、何もアピールせずに、顧客の探究心と気付きを演出する。使いどころと、その効果を深く考えてみたい戦術です。